なごやっくす(Twitter@goshuin_dash)です。
天満宮(天神さん/天神社/菅原神社など、菅原道真公を御祭神として祀る神社)に梅がある理由について書きました。
「●●天満宮」という名前の神社、例えば、
- 北野天満宮(京都市上京区)
- 太宰府天満宮(福岡県太宰府市)
- 大阪天満宮(大阪市北区)
こういった神社にお参りすると、必ずと言っていいほど梅の木がありますよね。ソレを見て、
なんで天満宮には梅があるんだろう??
と疑問を持つ人はすごく多いんです。
以前の僕もそうでしたし、神社に良くお参りするようになった今では、友達から質問されたりもしますからね。
僕が天満宮で授かった御朱印など。左上から時計回りに岩津天満宮/太宰府天満宮(右が飛梅)/尾長天満宮/大阪天満宮/岡崎天満宮(御朱印帳)/七尾天神社です
そこで今回は、天満宮に梅がある理由をわかりやすく解説することにしました。この記事に目を通すだけで…
- 天満宮に梅がある理由
- 菅原道真の代表的な和歌(梅の句入り)
- 菅原道真の逸話(飛梅伝説など)
- 「太宰府天満宮と梅」に関する豆知識
このあたりが一気に理解できちゃいますよ。
まずは、天満宮に梅がある理由を、一言でズバリ言いますね
目次(もくじ)
天満宮に梅がある理由
天満宮の総本社(総本山)・北野天満宮の三光門前の梅
天満宮に梅がある理由、それは…
- 天満宮の御祭神・菅原道真が梅をこよなく愛していたから
ずばりコレ。
そして道真が梅を愛していたことは、彼の詠んだ和歌からもひしひしと伝わってくるんです。
菊池容斎による菅原道真像
そこでココからは、菅原道真の詩歌でもとくに注目の「梅の句が登場するもの」、具体的には、
- 道真がわずか5歳にして詠んだ和歌
- 道真が太宰府に左遷される際に詠んだ和歌
この二首を取り上げつつ、道真と梅の深い関係について見ていきましょう。
なお、菅原道真の一生(=人生の超要約版)については、以下の僕のツイートをどうぞ
📝菅原道真を1ツイートで説明する⛩️
・わずか5歳で和歌を詠み、神童と称された
・学者としての最高位「文章博士」になる
・弓の実力もピカイチ
・政治の中心で大活躍(右大臣)
・しかし政略により身に覚えのない罪で左遷(太宰府へ)
・失意のうちに生涯を閉じる
・その後、無実が証明され「学問の神」に— 御朱印ダッシュ!@なごやっくす (@goshuin_dash) 2019年2月4日
菅原道真が5歳の時に詠んだ和歌
日本三大天神の1つ・防府天満宮(山口県防府市)の梅
美や 紅の色なる 梅の花
あこが顔にも つけたくぞある
【意訳】
美しいなぁ 紅色をした 梅の花は
(自分の)ほっぺにも 付けたくなっちゃうよ
※あこ(阿呼)は道真の子供のころの名前
菅原道真が5歳のときに、庭に咲いている梅の花を見て詠んだとされる和歌です。
コレを見ただけでも、菅原道真が小さいころから、
- 梅を愛していた
- 文学の才能を持っていた
という2つのことが伝わってきますよね。
個人的には「女子力高いなぁ」とも思いました
幼少時代から菅原道真のそばには、(心の中も含めて)つねに梅の存在があったんですねぇ。
そして2つ目に移る前に、こちらも有名な百人一首に出てくる道真の和歌を紹介しておくと…
小倉百人一首に登場する道真の歌
百人一首と聞くと、広瀬すずさん主演の映画「ちはやふる」を思い出す人も多いはず!
此のたびは 幣(ぬさ)も取り敢へず 手向山(たむけやま) 紅葉の錦 神の随(まにま)に
※百人一首での菅原道真の名前は”菅家(かんけ)”
↑奈良吉野の紅葉。この歌は道真が、宇多上皇の吉野への旅にお供する際に詠まれたものです
今回の旅は 幣(ぬさ)を用意する暇もありませんでした 代わりに色鮮やかな紅葉を捧げますので どうぞ思いのままにお受け取りください
梅の句は含まれませんが、小倉百人一首に登場する菅原道真の歌です。
幣(ぬさ)は旅の途中に道の神様に捧げる、カラフルな紙吹雪のようなモノ。
バタバタして幣(ぬさ)を用意できなかったけど、美しい紅葉を代わりにお受け取り下さい
といったニュアンスの歌ですね。
“この度”と”この旅”を掛けているなど(掛詞)、22文字の中に凄まじい量の情報が凝縮されている芸術作品です。
ただし今回のテーマ(天満宮と梅)からは外れ気味なので、先に進みます
菅原道真のその他の代表的な和歌を厳選して3つ載せますので、目を通しつつ、次の章へとお進みくださいませ。
- 海ならず 湛へる水の 底までに 清き心は 月ぞ照らさむ(新古今和歌集)
- 水ひきの 白糸延へて 織る機は 旅の衣に 裁ちや重ねん(後撰和歌集)
- 君が住む 宿のこずゑの ゆくゆくと 隠るるまでに かへりみしはや(拾遺和歌集)
- 月夜見梅花
月耀如晴雪 梅花似照星
可憐金鏡転 庭上玉房馨
※道真が11歳の時に詠んだ漢詩
ということで続いて紹介するのは、天満宮(菅原道真)と梅の関係を決定づける「飛梅伝説」にもつながる和歌です。
道真が左遷される際に詠んだ歌
太宰府天満宮の飛梅(とびうめ)
東風吹かば にほひおこせよ 梅の花
主なしとて 春を忘るな
【意訳】
春の風が吹いたら その香りを太宰府まで届けておくれ 梅の花よ
私がいないからといって 春を忘れるんじゃないぞ
政治で活躍していた道真が無実の罪を着せられて太宰府に左遷されるとき、自宅(京都)の梅に向かって詠んだ歌です。
左遷とは、それまでの官職から低い官職に落とすことです
道真が梅を愛していたと同時に、梅もまた道真を好きだったことが伝わってくる歌ですね。
そしてなんとこの梅は道真を思うあまり、たった一晩にして太宰府まで飛んできたんだとか。
僕がお参りしたのは夏。夏の飛梅(右)も葉が生い茂って美しい
コレが飛梅伝説であり、太宰府天満宮の本殿横の梅に”飛梅”という名前が付いている由来です。
ちなみに飛梅は、以下にあげた歌のタイトルなどにも使われています。
- 飛梅(さだまさしさんの歌)
- 飛梅の賦(日本舞踊でおなじみの長唄
また、飛梅から採れた梅の種は「飛梅御守」として、お参りする人に授与されているんですよ。
貴重な”飛梅御守”の初穂料(金額)はいくらだと思いますか??正解はのちほど!
そして友達に飛梅伝説について説明するとき、オマケとしてサラッと付け加えると、
へぇ~ そんな伝説もあるんだ!面白ーい!
と喜ばれることも多い、もう1つの「飛●伝説」が…
【補足】飛松伝説
Instagramから引用させていただいております。飛松伝説の地となっている板宿八幡神社(神戸市須磨区)です
飛梅伝説と一緒に語られることも多いのが、
- 梅は太宰府まで飛んで行ったが、松は途中で力尽きて神戸板宿の地に根を下ろした
という飛松伝説。僕も会話のネタに良く使っていました。
しかし!
飛松伝説の地・板宿八幡神社のサイトを見てみると、ちょっと違った記載があるんですよね。
>>[参考]神社の由緒|板宿八幡神社ということで、記載をもとに僕の想像も加えながら「もう1つの飛松伝説」について、以下にまとめました。
菅原道真は太宰府に向かう途中、板宿の地に泊まりました。
その晩、道真は思ったのです。
私が京都で大切にしていた、桜と梅と松…
桜は私との別れを悲しむあまり枯れてしまった
梅は私のことを想い、旅の途中に芳しい香りを届けてくれている
しかし松はなんだ、素知らぬ様子じゃないか…
実際に道真がそのときの心情を詠んだのが以下の和歌です。
- 梅は飛び 桜は枯るる 世の中に
何とて松のつれなかるらむ
するとどうでしょう、一夜にして松が板宿の地まで飛んできたのです。
これが板宿の飛松伝説。神社の近くの、
- 飛松町
- 飛松中学校
などの名前は、この伝説にちなんでいます。
…いかがでしょうか。
松は力尽きたワケではなく、道真を想って本人のいる場所まで飛んできたというエピソードになっていますね。
ということで、飛松伝説には2種類あるよというお話でした。
ただし、前者に関してはめぼしい史料を見つけられていません
さてさて、天満宮(菅原道真)と梅のあいだに深い関係があることは、ココまでで良くお分かりいただけたかと思います。
後半は天満宮の総本社かつ、菅原道真の墓所でもある太宰府天満宮に焦点を当てて、
- 太宰府天満宮で楽しめる「梅」にまつわるグルメなど3つ
- 大宰府天満宮の梅の種のお守り2種類
これら2つの話題(豆知識)を順番に取り上げていきますね。
太宰府天満宮の梅に関するグルメ
この章で取り上げるのは以下の3つ。
- 梅ヶ枝餅(太宰府名物のお菓子)
- 太宰府天満宮の梅干し
- 太宰府天満宮の御神酒(梅酒!)
1つずつ順番にいきますね。
太宰府名物 梅ヶ枝餅
梅ヶ枝餅(梅が枝餅)です。表面の梅の刻印がイイ味出してます
まずは太宰府名物のお菓子・梅ヶ枝餅。
餡(あんこ)を薄めの餅で包むというシンプルなレシピながらも、
- 外はパリッ!
- 中はもちっ♪
の食感がたまらない、太宰府天満宮にお参りした際のお土産として人気のお菓子です。
太宰府に左遷された菅原道真は、まるで罪人のような暮らしをさせられていました。
それを見かねた老婆(浄明尼)が、梅の枝に粟餅を巻き付けて差し入れしたという故事が梅ヶ枝餅の由来とされています。
なお、梅餅という名前ですが、梅の味や香りは一切しませんのでご注意(orご安心)を。また、
東京に住んでるけど、ものすごく食べてみたい…
という場合は、以下の通販ショップをどうぞ。
元祖梅ヶ枝餅協同組合に加盟している「やす武」の梅ヶ枝餅です。
冷凍便で届けてくれます。
やす武のお店は、太宰府駅と太宰府天満宮入口のちょうど中間にあります
ちなみに天神さんの日(毎月25日)には、よもぎ入りの限定梅ヶ枝餅を販売するお店もあるそうです。
梅干し「天神さまの梅」
Instagramから引用させていただいております
続いて「天神さまの梅」。
太宰府天満宮の境内で採れた梅を使った梅干しです。
みるからにご利益がありそうですね
2018年は11月1日に「初梅献上祭」が行なわれ、そのあと授与所で参拝客に授与されました。
噂によると、毎月25日に個数限定で販売されているんだとか。年配の方へのお土産に喜ばれそうです。
太宰府天満宮の御神酒(梅酒)
太宰府天満宮の御神酒をいただきます。清酒じゃなくて天満宮は梅酒。美味い(^ω^) pic.twitter.com/r9VP40504H
— とらとら@れにちゃん推し (@tantan555) 2017年1月9日
Twitterから引用させていただいております
一般的に、御神酒には清酒が用いられますが、太宰府天満宮の御神酒は珍しいことに梅酒なんです。
とはいえ、ココまでずっと梅の話題でしたから、今聞いても珍しく感じないかもしれませんね(笑)
ちなみに例年3月中旬には、太宰府天満宮で梅酒まつりが開催されています。
太宰府の梅と梅酒を一緒に楽しめるなんて、最高のイベントですね!
…と、梅に関するグルメなどはこんな感じ。
最後に、太宰府天満宮の梅の種のお守りを2種類紹介して(1種類はウン万円)、まとめに入ります。
太宰府天満宮の梅のお守り【2種類】
除災招福梅実守
Instagramから引用させていただいております
まずは「梅実守」。初穂料(値段)は1200円とのこと。
種の中には菅原道真の姿が見えます
持ち歩くだけでなく、ことあるごとに拝みたくなるようなお守りですね。
飛梅御守
いっぽうこちらは「飛梅御守」。
先ほど紹介した伝説の木・飛梅の実の種を使った、一生一代のお守りです。
一年でお返ししない、一生モノのお守りってことですね
そして、気になるお値段(初穂料)は…
飛梅の実は、神前に供えられた後、種だけにして「飛梅御守」として一体10万円で参拝者に授与されるという。
なんと10万円です。
ケチくさいかもしれませんが、この先10年/30年/50年生きるとして計算してみましょう。
- 10万(円)÷10(年)=10000円/年
- 10万(円)÷30(年)≒3333円/年
- 10万(円)÷50(年)=2000円/年
なるほどなるほど。
ちなみに飛梅御守は、飛梅の種以外にも「天神さまの御神衣(菅原道真公の服)」を使って作られているというありがたさも。
そう考えると受けたく(頂きたく)なってきますね!
ついつい熱が入って文章が長くなってしまいました。ココまで読んでいただいて感謝です。
記事のおさらいに入りますね。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。
今回のまとめです。
まず天満宮に梅がある理由と、それに関連して菅原道真が詠んだ和歌については僕の要約ツイートをどうぞ。
[天満宮に梅がある理由]
→御祭神・菅原道真が梅をこよなく愛していたから[道真が詠んだ梅の和歌]
・美や 紅の色なる 梅の花 あこが顔にも つけたくぞある
(当時5歳。"あこ"は幼名)
・東風吹かば にほひおこせよ 梅の花 主なしとて 春を忘るな
(太宰府に左遷されるとき)
→有名な飛梅伝説につながる pic.twitter.com/pcumriFS7B— 御朱印ダッシュ!@なごやっくす (@goshuin_dash) 2019年2月6日
そして天満宮の総本社・太宰府天満宮の梅に関する話題(グルメなど&お守り)も紹介しましたね。以下に要約します。
- グルメ編
- 梅ヶ枝餅:老婆が梅の枝に餅を付けて道真に差し入れたのが由来
- 天神さまの梅(梅干し):境内で採れた梅を使用
- 梅酒(御神酒):一般的に御神酒は清酒なので珍しい
- お守り編
- 梅実守:種の中に菅原道真公が
- 飛梅御守:初穂料10万円。一生一代のお守り
そうそう、天満宮の神紋(社紋)が梅紋なのも、梅の花が境内にある理由とまず間違いなく同じでしょうね。
それにしても道真の和歌はかっこいい!調べていて楽しかったです
太宰府に限らず、あなたの街の天満宮にも梅にまつわる授与品があるはず。
ぜひ探してみてくださいね。
そして梅と同様に、必ずと言っていいほど天満宮の境内にいる「牛」については以下の記事をどうぞ。それでは!
天満宮(菅原道真を御祭神として祀る神社)に牛がいる理由をまとめました。「牛を撫でると得られるご利益」「北野天満宮の牛に関する豆知識」も!